名古屋城天守の有形文化財登録を求める会
事務局
7観名保第4号
令和7年4月15日
名古屋市長 広沢 一郎
市長に対する提案並びに質問について(回答)
日頃より、市政にご理解とご協力をいただき、誠にありがとうございます。
令和7年3月31日付けで求められた提案並びに質問について、下記のとおり回答します。
記
1.名古屋城に関する史資料の「世界の記憶」への登録のご提案
(回答)
ご提案にかかる史資料は、名古屋城にとって貴重な記録であり、その歴史的価値を広く知っていただくことは重要であると考えております。しかしながら、これらの史資料は国内での学術的評価がまだ十分にされているわけではなく、現状では「世界の記憶」への登録は難しいと考えております。
そのため、まずはこうした資料の価値を明らかにするための調査研究を進め、特別史跡名古屋城跡が有する文化財や資料等に関する学術的・総合的な調査研究を実施するとともに、本質的価値の理解を促進するため、様々な方策を検討してまいります。
2.木質的な方針の変更に伴う現存天守の価値の再号について
(回答)
現天守閣は、戦後復興の象徴として、内部を博物館とする鉄骨鉄筋コンクリート造で再建され、ケーソン基礎の採用や、精度の高い外観復元が行われるなど、当時の建築技術の水準を表すとともに、鉄骨鉄筋コンクリート造等で再建された天守閣の代表事例として評価でき、再建後65年が経過して、文化財となり得る一定の価値が生じてきているものと認識しております。
一方、耐震性の確保等の課題が生じており、耐震改修などによる現天守閣存続と木造復元とを比較衡量した結果、明治維新により多くの城が破却される中で、永久保存するとされた経緯を踏まえ、文化庁の基準に基づき、昭和実測図をはじめ豊富な史資料により、外観のみならず内部を含めて、可能な限り史実に忠実な復元を行い、先に復元された本丸御殿とともに、近世期の名古屋城本丸を体感できる歴史的・文化的空間を蘇らせることで、特別史跡名古屋城跡の本質的価値の向上と理解促進を図ることができるものと考えております。
木造復元に際し、戦後復興の象徴として再建された現天守閣の記録を適切に保存・活用し、広く発信していくことで、果たしてきた役割等を後世に継承するなど、 丁寧に進めてまいります。
3.安全性の評価、歴史的復元計画という意義を踏まえた資料の全面公開を求めます
(回答)
往時の姿に復元し、多くの方に歴史的・文化的空間を体感いただく計画とすることで、特別史跡名古屋城跡の本質的価値の理解を促進させることができると考えておりますが、復元に至るまでの調査研究なども同様に、特別史跡名古屋城跡の本質的価値や、我が国の伝統技術の理解を深めるものと認識しております。
現在、本市のウェブサイトにおいて、復元原案の考証や、防災上の観点を踏まえた復元計画の内容等をとりまとめた「特別史跡名古屋城跡木造天守整備基本計画 (案)」(以下、「整備基本計画案」とする)や、有識者会議での検討状況を公開しておりますが、より分かりやすい情報発信に努めるなど、事業への理解を深めていただけるよう丁寧に進めてまいりたいと存じます。
ご指摘の資料等については、防災・避難計画策定に係る事業者の技術上のノウハウに関する情報等を含むことから一部非公開としておりますが、今後の情報公開についても、裁判所の判断の主旨を踏まえつつ、本市情報公開条例に則り、適切に対応してまいります。
4.広沢新市長の所信についての市民説明会の開催を求めます
(回答)
現在、「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会からの最終報告を踏まえ、これまでの事業全体の進め方がどうであったかの観点を含めて総括を行っているところです。
今後、総括の内容を示した上で、障害者等当事者への謝罪を行い、受け入れていただきましたら、市民の皆様にも経緯や今後のあるべき進め方等を丁寧に説明しまして、事業を再開してまいりたいと考えております。
なお、私が市長に就任したことをもって、従前からの市の事業の方針を変更するものではないため、所信を明らかにするための市民説明会は予定しておりませんが、 天守閣整備事業の理解を深めていただけるよう、様々な機会を捉え、市民向け説明会の開催を検討してまいります。
5.改修費用、収支計画についての市民説明会の開催を求めます
(回答)
木造天守復元にかかる収支計画につきましては、平成28年度に第三者機関による調査を行ったうえで、総務省へ提出いたしました。しかしながら現在、竣工時期を見通すことができないことから、具体的な費用を算出できない状況となっております。
一方で、市民の十分な理解のもと事業を進めていくことが重要であると認識していることから、事業の再開後には、事業費や事業の進捗状況などについて、様々な機会を捉え、説明できる場を設けられるよう検討してまいります。今後も、より分かりやすい情報発信に努めるなど、事業への理解を深めていただけるよう丁寧に進めてまいりたいと存じます。
6.名古屋市が把握する文化庁の鉄筋コンクリート造天守に対する見解を伺います
(回答)
平成27年6月に、文化庁に天守整備の考え方について照会を行ったところ、「天守を復元する場合は、原則として材料等は同時代のものを踏襲する必要があるが、それ以外の可能性を排除するものではない。」とした上で、「名古屋城天守閣については、往時の資料が十分そろっていることを踏まえると、いわゆる復元検討委員会において木造によるできうる限り史実に忠実な復元をすべきと意見が出される可能性が極めて高いと考えられる」との見解をいただいております。
7.2つの文化庁の見解について広沢新市長の所見を伺います
(回答)
「鉄筋コンクリート造天守等の老朽化への対応について(取りまとめ)」 (史跡等における歴史的建造物の復元の在り方に関するワーキンググループ)では、「木造か延命化のどちらが史跡等の本質的価値に資するかを検討したうえで、今後木造による再現の可能性を模索するなど、個々の史跡等の事情により様々な整備方策を執ることが考えらえる」と示されております。
名古屋城天守においては、耐震改修などによる現天守閣存続と木造復元とを比較衡量した結果、明治維新により多くの城が破却される中で、永久保存するとされた経緯を踏まえ、文化庁の基準に基づき、可能な限り史実に忠実な復元がされた天守は、先に復元された本丸御殿とともに、本質的価値の向上と理解促進にとって大きな効果が得られることから、木造で復元する方針としております。
8.誤りの指摘されている「2万人アンケート」のやり直しを求めます
(回答)
平成28年度の2万人アンケートで、現天守閣の耐用年数を約40年程度(再建からの合計で約90年程度)としたことは、平成22年度に実施した構造体劣化調査における残存耐用年数の評価結果に基づいたものであります。
現天守閣については、精度の高い外観復元が行われている点で近世城郭の理解に寄与し、大きな役割を果たしてきていると認識しておりますが、本市としては、特別史跡名古屋城跡の理解・活用にとって適切かつ積極的な意味を持つかという観点で比較衡量を行い、天守を木造復元する方針としており、2万人アンケートにおいて、回答者の6割以上の方に木造復元に賛同いただけたことが、木造復元に対する市民の思いの表れであると受け止めております。
9.世界的なバリアフリーの新技術募集によって判明した事実に対する見解
(回答)
名古屋城の木造天守復元につきましては、文化庁の基準に基づき、規模、構造、 形式等において高い蓋然性を確保するとともに、防災面や観覧上必要な現代設備を付加することにより、江戸情緒を損なわない、可能な限りの史実に忠実な復元を目指すこととしており、バリアフリーとの両立が叶わないとは考えておりません。
社会要請としてのバリアフリーは重要であり、昇降技術に関する公募で選定された小型昇降機は、梁や柱などの主架構を傷めることなく設置できる技術であることから、可能な限り上層階まで設置することについてチャレンジし、史実性とバリアフリーを両立させてまいりたいと考えております。
10.現存天守は唯一無二の存在であるという歴史的意義について
(回答)
現天守閣は、戦後復興の象徴として、内部を博物館とする鉄骨鉄筋コンクリート造で再建され、精度の高い外観復元が行われた点で、近世城郭の理解に寄与し、大きな役割を果たしてきております。また、市民の愛着や誇りを醸成するとともに、地域の観光振興に寄与し、名古屋の都市のイメージを対外的に発信し続けてきたことの意義は大きいと認識しております。
こうした現天守閣の価値について、文化庁や有識者の意見をいただきながら、整備基本計画案の中にとりまとめてきており、木造復元に際し、戦後復興の象徴として再建された現天守閣の記録を適切に保存・活用し、果たしてきた役割等を後世に継承することで、400年を超えて存在してきた名古屋城の歴史的価値を高める要素になるものと考えております。
名古屋市観光文化交流局名古屋城総合事務所